一 、書 線
臨書で学んだ筆法を、漢字仮名交じりの書の作品に応用しなくては、学んだ意味がありません。
その筆法を、ここで一 応まとめてみましょう。
@円筆
点画が丸味を帯びたもので、用筆上、直筆にすると、よく鋒先が点画の 内側に入り、温雅な深みのある線となる。
A方筆
円筆の 対語で、筆の表裏が点画にはっきりと表れ、 角ばった感じで、 特に転折部分などが、がっちりと折れ曲げたような筆使いとなる。
側筆にすると、鋒先があらわれ、鋭く力強い厳しい筆致が生まれる。
龍門造像記など代表的な表現である。
B露鋒
蔵鋒の対語。運筆の時に筆の 穂先をあらわに出して書く方法。
露鋒による線質は、すっきりとして切れ味がよく、これも龍門造像記のような角ばった点画を出す用筆法。
C蔵鋒
露鋒の対語。 鋒先を包み込むという事で、 また、そのように書くこと。
D逆筆
起筆( 始筆)における一つの用筆法。
点画 を最初に書くとき、一 般には自然に進行方向に向かって入筆するが、
逆筆では進行方向とは反対に穂 先を入れて 進行方向に運筆する。
この用筆法で書くと、ねばり強く重厚な線質になる。
隷書や象書の用筆法であるが、鄭義下碑や雁塔聖教序にみられる。
E渇筆
墨量が少なくなって、かすれてみえる筆跡をいう。
渇筆に対する語に潤筆がある。
渇筆は書において大切な表現要素で、 次のような原因で表れる。
一つは墨量が少なくなって来た時、又は紙の質によるもの、そして運筆の速さによるものなど。
渇筆と潤筆は作品に立体感を与え、古雅な趣を出す効果があり、書で大切な要素である。
F潤渇
潤筆と渇筆から生じる墨のにじみとか、かすれの変化をいう。
これは墨量、紙質、運筆の遅速緩急など、作者の心の緊張感まで総合して現れるもので
書に立体感と深さをもたせる要因の一つであ る。
潤は豊かさ、重量感、温かさを、渇は軽妙、枯淡、(*1)峻勁(しゅんけい)さなどの感じを与える。
これらの配合、調和が表現意図を強調する。
(*1)峻勁(しゅんけい)さ→きびしくつよい事
G筆圧
運筆の際、筆の鋒先にかかる圧力のこと。
筆圧が加わると、線は深く、強く、逞しくなる。
筆の性能を生かした圧力のことで、粗雑に押しつけるのとは異にする。
これに筆者の個性が表れる。
H吊る線と開く線
強くて細い線を書くには「吊る」 という技法が必要である。
王義之や猪遂良のものに多いが、 筆の先を吊った形で書く用筆。
開く線とは、筆の鋒先を開かす技法。
押しつけて太く書くのではなく、顔真卿のような書法。
I引( 曳) く線、押す線
鋒先がいつ も後から後からついて来るような書線を、曳く線という。
鋒先を前へ前へと進めるようにして出来た線を、押す線とい う。
それぞれ長所と短所があることを知って書こう。
長い穂先の筆はどうしても「曳」になる。
J左手線
右手で文字を書く場合と、左手で書くのとは、筆の穂先の通る位置が異なると思う。
それを右手を使って、左手で書いたような線を「左手線」 と名付けた人がい ます。
こういった線は、古典に見受けられるが、実に変化に富んだ美しい線です。
私は創作で、利き腕でない左手を使って発表した作品が、何点かあります。
二、曲線は直線の連続である
私は学生の頃、数学を専攻しました 。
円周の長さを出すために 、小さな三角形の集合体を作り一辺の直線を数多く加算する事で円周率の成立を学びました。
円周も直線の集まりだということを知りました。
書線も、いつも丸丸と書いていたのでは、だらしなく、 直線を入れないとスツ キリしないと思っています。
仮名でもよく観てみる と、直線的だし、私は線の両面を見ることを習慣にしています。
三、漢字より仮名は小さく、画数の多い文 字は、画数の少ない 文字より大きく書く
字の懐の広さを考えて 、表題のように書くとバランスがとれるという一般的な目安。
碁盤の目に一ぱい文章を 書いてみるとそれが分かる。
視覚的なものの均 衡は計算上のものとは異にしてい る 。
四、動きを入れる
文字には筆順がある 。
その筆順に従って動くのです。
そして文章を書くのですから、その文字がリズミカルに動くとそれらの動きの総てが筆者特有の個性的な動勢になるのです。
動きを大きくして書く事が、作品全体をスケールの大きいものに仕上げることができます。
五、書を芸術にするために
前回と今回を書きながら、私が書いているものが本当に「書」か?
「書」について分からないこと が多くなりました。
その疑間を私なりに究明したく、 今、書について書物を読んでいます。
「書」が芸術として他の芸術と違うところや、同 じところ、又独自なところなどを知りたいと考えています。
だから今までに述べた内容は、間違っているかも知れません。
その時は修正させて頂きます。
今は次のことを調べています。
@美について
A芸術の近代化( 現代化)
B独創 ( 独創性)
C古典
D視覚芸術
E造形芸術
F造 形( 造形性)
G文字性
H形
I抽象性
J書の線
K書表現
L空間性
M書
六、まだ知りたいこと
書道用語はまだまだ多くある 。その用語を知って使いたい 。
そして、 しっかりとした持論を主張したい。
※参考文献・ 書道用語事典 ( 株式会社同朋舎出版)
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